No.018
小笠原流の弓(1)
2002/08

一張弓

小笠原流内最高の弓で、天下に一張の意味を持ち、宗家においても一世に一張のみを許すだけと伺います。

先代清信先生の代に有っては、斉藤直芳氏が一張弓格の免許を賜ったと伺っております。先代茂治もこの弓は無論、見たこともないと申しておりました。「一張弓」の伝書と共に、宗家から賜ると聞いております。私も生涯見ることは無いと思います。

重籐弓

小笠原流の重籐弓は黒漆、白漆を正式とします。

製作方法は、白木の弓を弦通りと成りを調整する為小村をし、両面の竹の皮を取り、水ペーパーで仕上げます。これは漆が良く弓に馴染むようにするためで、長年の使用でも漆が浮きにくくなります。そして、木綿の糸を下の弭から上の弭まで一気に巻きます。糸を引っ張りながら巻いて行く手の加減が違ってくると糸のでこぼこが出来、漆塗りに微妙に影響してきます。次に瀬〆漆を良く染み込ませながら塗ります。そしてへらで何度もこすり糸を締め直します。ここをきちんとしないと後々漆が浮いてくる事になります。感心するのは、こういったことを700年前から漆と木綿糸で、FRP技術と同じように弓を強化する知恵を持っていたと言う事です。下地からゆっくりと漆が乾燥するように2ヶ月間放置します。

そして研ぎ出し、次に蝋色漆を塗りまた研ぎ出し、何回も塗り砥ぎの作業を繰り返し、6〜7回重ね塗りをします。その間、紙ペーパーは150番、300番、600番、800番、1000番、1200番、1500番と順に細かいものに変えていきます。研ぎ出しの難しい所は側面の角の糸を出さないようにする事です。重ね塗りの始めの頃は凸凹をなくすように手の動きを長くし、仕上げに近づくにつれ細かく手を動かします。

そして仕上げ漆をかけ、艶出しをします。あまり照りが出ないように「半艶」としています。この方が重籐弓にした時、風格があるように思えます。

そして、3厘の甲白(光白)籐を、握り上36個所、下を28箇所、末弭に2箇所、本弭に1箇所、上下の関板にも巻きます。甲白矢摺籐を3寸〜3寸5分(騎射弓は5寸)籐や間隔の寸法の上にも法則があり、それに従い巻きます。

先代が「28宿の悪星(牛宿)を嫌う人がいるから巻かない」と言った事があり27箇所でも良いとの事ですが、父よりここを空けるのか詰めるのか聞きそびれてしまいました。機会があればこれらを調べてみたいと思っています。

巻き方で重籐弓と同じ意味を持つ4足弓があります。これは旗本が持つ重籐弓として、それぞれ36、28を4つずつ間隔を詰めた弓で、重籐弓と同一とされています。そして、巻いた籐の巻き始めと終わりに共色の漆で口取をします。これは雨天でも籐が取れないようにする配慮と考えますが、細く線を引きながら籐の中に少し染み込ませなければならない作業で、かなり高度の技術がいり、いつも緊張します。この口取りの色は小笠原流では共色とし、黒の蝋色を使用します。

最後に射手の手に合わせて黒の握り皮を巻きます。巻き数は正式を9巻き半、略式を7巻き半とし、巻く途中3箇所、隙間を空かせるのです。

籐の数につての補足

重籐弓に巻かれる籐の数は、天の28宿、地の36禽とあります。
広辞苑には、28宿、黄道に沿って、天球を28に区分し、正座の所在を明瞭にしたもの。月はおおよそ1日に一宿ずつ運行する。中国で、蒼龍(東)、玄武(北)、白虎(西)、朱雀(南)の4宮に分け、さらに各宮を7分
 東は、角、亢、氏、房、心、尾、箕
 北は、斗、牛、女、虚、危、室、壁
 西は、奎、婁、胃、昴、畢、觜、参
 南は、井、鬼、柳、星、張、翼、軫
とあり、また36禽については昼夜12時の各自に一獣を配し、それぞれに二つずつ属獣がついた。占いに用いられ、また仏教では「それぞれの時に出現し修行僧を悩ますと言う」とあります。

私が調べた書には、28宿の東西南北の分け方は同一で7星の配置が少し違いますので、参考に記しますと
 東方7宿は、昴宿、畢宿、觜宿、参宿、井宿、鬼宿、柳宿
 南方7宿は、星宿、軫宿、亢宿、張宿、翼宿、角宿、氏宿
 西方7宿は、女宿、斗宿、牛宿、箕宿、心宿、房宿、尾宿
 北方7宿は、虚宿、危宿、室宿、奎宿、壁宿、婁宿、胃宿
となります。

36禽は、狸、豹、虎、狐、兎、狢(ムジナ)、龍、蛟(ミズチ)、魚、蝉、鯉、蛇、鹿、馬、麕(ノロ)、羊、雁、鷹、(ユオウ)、猿、猴、鳥、鶏、雉、狗(イヌ)、狼、犲(ヤマイヌ)、豚、(ユウ)、猪、猫、鼠、蝙蝠(コウモリ)、牛、蟹、鼈(スッポン)」以上の動物です。

重籐弓 糾方
今回のコラムは小笠原教場より発行される「糾方」より抜粋しました。
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